ラン(見附島〜ゴール)
同じペースを刻むランナーがすぐ目の前を走っている。スピードはないがこちらも抜く元気はない。毎回同じタイミングでA.S.に立ち寄っていた。見附島の折り返し、三角のコーンがあると思っていたら、公園をぐるりと時計回りに回って折り返すようになっている。
「折り返しまで遠かったですね、全然もうすぐじゃないしっ」とその選手会話をした。折り返しにあるA.S.に立ち寄る。元気のいい中学生がボランティアだった、ああ、その元気を分けてほしいと思った。スポーツドリンクをのみレモンをかじりバナナをつめこみ、ホースから出る水を浴び復路へ。あと少し。
制限時間が気になる。9時間30分だっけ?9時間40分だっけ?すでに腕時計は朝のスイムから7時間30分経過している。
交差点でランナーを見守ってくれている大会関係者に聞いてみる。
「制限時間って何時間でしたっけ?」
「たしか、午後4時xx分には解除だったはずですよ」と言う返事。
そうか、道路が何時まで監視するのかは知っているけど、ゴールまでの制限時間は知らないんだよな。少なくとも9時間前半を目指そう。と思った。どうにか歩かずに進んでいる。
往路で通った同じ道を戻る。左側通行だ。前方をみると最後の選手らしき人が見附島方面へ走っている。そのすぐ後ろにはオフィシャルカーが続く。少し遅ければあのクルマに回収されていたのかと思った。疲れたけど歩いている場合じゃない。
後ろを振り返ってみた、続く選手がいない。ポツンとただ1人。淡々と一歩一歩を刻む。反対車線にあった往路でお世話になったA.S.はもう畳まれてしまっていた。前方には、選手らしき影が3,4人確認できる。
Bの折り返しがあった三角コーンまで行けばあと5kmのはずだ。そこまでは歩かないぞと決めて走った。いつまでたっても青い三角コーンは現れなかった。A.S.で止まって残りの距離を聞くと3.5kmだという。すでに青い三角コーンは撤収されていたのだ。
ひざを包帯ぐるぐるにまいた選手をパスする。歩くしかないようだ。どうにかゴールまででたどり着いてほしい。
もう間に合わないな、という会話をA.S.の人と会話している選手。第1ウェーブでスタートした様子。スタート時の15分の差が効いて来るくらいの時間になってきてしまったのかとあらためて焦る。
残り2km。最後のA.S.に立ち寄る。経過時間はもうすぐ9時間丁度になろうというところ。マラソンでは残り2kmが永遠に続くような長さなんだよなと思う。もしロングだったら残り20kmもあるんだよなと思った。うらはらに足が止まった。間に合いそうだという気持ちが体を安心させてしまったのか。僕は歩道を歩き始めた。
500mくらいは歩いただろうか?距離も時間も覚えていない。残り1kmの看板で再び走り始める。前に選手が1人いる。
同じタイミングでゴールしないほうがよいよな。なんていらない心配をした。
ゼッケンベルトを確認しよく見えるように位置を調整した。
ようやくたどり着ける安心感でなんだかじわっと涙がこみ上げてくる。