トランジット(バイク〜ラン)
ようやくバイクを終え、トランジットエリアに戻る。自分のバイクラックだけポツンと空いている。ああ、皆んなランに出かけてしまった後なのだと思う。
まわりで着替えている人は3、4人だ。そのうちの一人が係員にリタイアを告げている。どうやら第1ウェーブでスタートした人らしい。
その選手はバイクのタイムオーバーになってしまったのでランのスタートをあきらめたのだ。選手は係員にアンクルバンドを渡そうとしたところで、計時はどうするか尋ねられていた。計時はランのスタートゲートに設けられている。そこで計時しないと、バイクのタイムがどれくらいだったのか、リザルトに残らないのだ。タイムオーバーだとしても。
その選手は結局どうしたのか覚えていない。計時して終えたのかそのまま帰ったのか。そこでやっと自分にも時間がないことに気がついた。第一ウェーブがすでにタイムオーバーということは、その15分後にスタートを切った第四ウェーブの自分も残り時間がないということなのだ。
僕は係員に聞いた。「間に合いますか?」
係員「ええっと、第4ウェーブですね。あと10分です。」
どうにかランのスタートは切れそうだ。この時点でトランジットにいない兄はここでタイムオーバーだろう。残念だけど、いっしょに来た母に、あなたが生んだ息子たちは元気に育って、こうしてゴールできましたよと、そろって報告することはできなくなってしまった。
いつもの、ランニングパンツ、いつものランニングシャツを着て、いつもの帽子をかぶって走り出した。レース用に新しいものを使うよりも使いなれた道具をまとうと落ち着く。
バイクタイム 5:10:46
通過タイム 6:15:10
(リザルトを見てわかったのだが、この通過タイムは完走できた選手のうち最後の通過タイムだった。つまり、僕のあとにランに移った選手は誰も完走できなかったのだ。)