peicozy's blog

マラソン、トライアスロン、ブルベの完走記と、日々思うこと

バイク2週目

トランジット近くのA.S.。1週目では軽く立ち寄っただけだったけど、2週目はしっかり補給する。どこを走っていても、明らかに1週目ほど元気がない。時速は20kmくらいか。踏み込む力がなくただただ回し続ける。


坂道が目の前に見える。有無を言わさず一番軽いペダルにあわせ、ひたすらくるくるまわす。背中に水をかけようとボトルを手にとる。すでに水ではなくぬるま湯になった水を背中にたらす。ボトルをゲージに戻そうとして手がすべり落としてしまった。上り坂で速度がなかったので立ち止まり拾い上げる。下り坂だったら捨てていっただろうなと思う。

クラッシュ!?

ゆるく続く下り坂を降りきるあたり。視界には先行するバイクが1台。前を行くバイクはスピードが緩くなってきた。このまま坂のスピードを利用して、一気に前の選手を追い抜こうと決めた。ペダルを少しだけ踏み込む。スピードが上がる。選手の右側には十分なスペースだ。対向車もない。


いよいよ追い抜こうというとき、先行するバイクがフラフラッと右側に寄ってくる。まずい、このままいけばクラッシュだ。体ごと投げ出されてひどいスリ傷だらけになって、初参加の珠洲大会も途中棄権で終えるのか!?と、一瞬あたまの中をよぎる。


とっさに前後輪をフルブレーキをかけた。ロックしたまま滑っていく後輪。なぜだかわからないけど、「ごめんなさーーーーーい!!!!」と大声を出していた。ギリギリぶつからずに止まったときには「大丈夫ですか!?」
と言っている僕。それは相手のセリフだろうに。声をかけられた相手の選手はなんだかわけがわからない感じでぽかんとしていた。どうやら、”トイレあります”の看板をみて、道路右にある小屋に止まろうとしたらしい。本当にぶつからなくて良かった。命拾いをした。

生きていることを感じる

珠洲の海岸線は美しい。下り坂では一段といい気分になる。右手に美しい海岸を眺めながら坂を一気に下り降りる。左手は山だ。まわりに選手はいない。一番重いギヤに切り替えまわす。ペダルは軽い。


「ひゃっほーーーーーーー」


こだまするくらい大声で叫ぶ。叫びながら坂を落ちるように下る。
なんだか生きている。この世に生まれてきて、こうして駆け抜けている喜びをからだ全体で感じる。生きているってすばらしいことだ。


叫んだあと、ほろほろを涙がでてくる。生んでくれた母。こんなに面倒くさい趣味を理解してくれている妻。エイドで待っていてくれた息子。レースを手伝ってくれているたくさんの人々。みんなのおかげで生きているんだなと思うとまた涙がでてくる。

エイドステーションの息子

大谷峠前のA.S.ここで腹ごしらえ。1週目に出迎えてくれた息子と再会だ。息子はいつのまにか上下水着に着替えている。僕が1週する2時間のあいだ、海で遊んでいたようだ。ころあいをみはからってエイドのお手伝い?に戻ったようだ。


「パパ、もうすごい待ったよ。」と笑いながら息子が言う。氷をもらって体を冷やす。エイドへの到着が遅かったのでもうバナナが残っていない。なにかお腹にためようと思っていたのに、こりゃまずいなと思った。バッグに残していたパワーバーのジェルを1つ飲みほして再出発した。


息子はホースから出る水を選手にかける手伝いをしていた。あとで聞いたのだが、「水、要りますかーー?」とでかい声で叫び、必要な選手には頭からジャブジャブかけていたようだ。ホースの出口を指で押さえ、高い水圧にして選手に浴びせるいたずら?もしていたようで、もし標的になった選手がおりましたらお詫びいたします。ごめんなさい。


大谷峠の入り口。前をいく選手が1人。彼も僕もゆっくり漕いでいる。ゆっくり漕ぐ体力しか残っていないのだ。彼は峠を前にボトルから水分を補給している。


早々に一番軽いギヤに変え、のぼり始める。1週目で経験した峠だけど、あとどれくらいあるのか、カーブの先の斜度はどうたったかなど、漠然とした記憶だけ。体は覚えているけど頭は覚えていない感じだった。


体を左右にふって登る。ダンシングするとあっという間にへたってしまうので、シッティングで登る。ひとこぎひごこぎ、ヘェ、ハァという自分の息づかいを聞きながら登る。ハンドルにしがみついて登る。なにがあっても、バイクから降りずに登っていった。


旧道に分岐するまえのA.S.にたどり着いた。やっぱりお腹を満たすものが足りない。一旦自転車をおりて、パワーバー1本まるごとムシャムシャと口に入れた。なかなか飲み込めない。氷水といっしょに飲む。頬がパンパンだけどムシャムシャ食べる。ついでにトイレに入って体を少し軽くする。再出発。


旧道を登る。1週目と同じ。続く坂。違うのはバイクを降りて歩いている選手の数だ。漕いで登っている人のほうが少ない。なんだかわかならいけど、僕はとにかくバイクを降りずに漕いで登っていった。このあとのランで使う体力なんて、もしかして残っていないかもしれない。と思った。もしかして、ランを走り出したらまったく動けなくて、そこでリタイアになっちゃうかも。でもそれはそれでいいや。もしリタイアになっても経験が足りなかったのだ。と思いながら、とにかくバイクを降りずに登った。


大谷峠を終え、気持ちい下り坂。漕いで行く元気はない。重力のまま下り落ちていく。そこからまた10kmの平地。あいかわらず長い。全然前に進まない。

足がつりそう

バイク残り3kmのところ。右足がつりそうになった。右足のフトモモの裏からからふくらはぎの裏まで、右足全体の裏側がつりそうだ。なにかのきっかけでピンと張り詰めたようになる。まずい。まだラン23kmが残っている。騙し騙し漕ぐ。力を入れて漕いだら一気につって収拾がつかなくなるような気がした。そっと騙し騙し漕いだ。


珠洲ビーチホテルにむかう最後の坂を惰性で下り、トランジットに着いた。