peicozy's blog

マラソン、トライアスロン、ブルベの完走記と、日々思うこと

2013年 第23回チャレンジ富士五湖マラソン100km完走記 〜ドラマはない。ただ100km続く道があるのみ〜

はじめに

「初めては1度しかない。」
いつもそう思っている。


昨年の72kmに続き、「初めて」100kmマラソンに挑戦した。
自分は何を感じるのだろう。。。

浅い眠り

レース前日午後7時。ベッドに入ったがなかなか眠れない。5ダースほど寝返りをうってやっと眠れたと思ったが、すぐにiPhoneの目覚ましが鳴った。こんな日は睡眠薬が必要だった。もう遅いけど。眠らないと走れない。午前2時に家を出発。


予報通りの雨。
間欠ワイパーでは視界不良だ。まいったな。


いっしょに100kmにエントリーしてしまった同僚のヤスを拾い中央道を下る。クルマはほとんどない。富士五湖方面に分岐してもクルマは少ない。選手は皆、前日移動しているのか。それとも自分たちの移動が遅いのか。少し不安になる。


高速を出る手前、電光掲示板が光っていた。


「積雪注意」


積雪!?
雨とは聞いていたが、、、山は雪だったのか!
チェーン持ってきてないよ。
スタート前に雪道でクラッシュしてDNSになりませんように。祈りながら高速を出た。

スタート会場へ

夜更けの雪は雨に変わった。クリスマスイブの逆だな。運良く道に積雪はない。木々にはうっすら雪が積もっている。車の屋根にも3cmほどの雪が積もっている。寒いわけだ。


大会要綱に従い駐車場に向かう。駐車場は、112kmの部、100kmの部、72kmの部に分かれている。100kmの部の指定駐車場は富士急ハイランドのコニファーフォレストだ。ゲートをくぐり、係員の指示に従って停める。朝からご苦労さまです。


傘をさし、荷物をかかえ車を後にする。送迎バスに乗りこむ。スタートはここから10分ほどだ。すでにランニングの支度になっている選手も多い。きっと近くに泊まっていたのだろう。


暗い中にバスに乗り込んでいると、トライアスロンのレースの朝を思い出す。宮古島の時も、長崎五島の時も、暗い中バスに揺られてスタートまで行った。今日4/21日は宮古島トライアスロンが行われる。宮古島は13時間半、富士五湖100kmは14時間が制限時間だ。宮古島の制限時間内にはゴールしたいな。なんて思っているうちに着いた。

準備

雨は止む様子はない。
スタートは駐車場より少し標高があがり、木々には一層雪が積もっている。


受付に行く。ゼッケン、計測チップ2枚、Tシャツ、ドロップバッグをもらう。Tシャツは12月までのアーリーエントリーの選手だけもらえる。今年は赤いデザイン。宮古島の抽選に外れた直後にエントリーしたのでTシャツもゲットだ。

ドロップバッグは2種ある。紐の色で区別する。青は42km地点用、赤は70km地点用だ。袋にゼッケンナンバーをマジックで記入する。念のため、名前や携帯番号を書いている人もいる。確かに、紛失したくないものね。


スタート前に着替えた預け荷物は針金つきのタグに自分のゼッケンを記入し預ける。

体育館 午前4時 スタートまで1時間

前日受付しておけばバタバタ準備する必要はないのだろうが。なんだか忙しい。


体育館2階の観覧席に移動。腰にバスタオルを巻き着替える。すぐ隣が女性だがおかまいなしだ。女性はすっかり準備を終え、VAAMゼリーを食べている。うーんその余裕がうらやましい。


dauterの10Lリュックを持ってきたけど背負っていくか悩んだ。
雨が止んだあとに合羽を入れておきたい。補給食も持っておきたい、、、
iPhoneも持って走るつもりだったが、、この雨で濡れたらひとたまりもない。やめよう。


昨年72kmに出た時はバイクジャージの背のポケットに荷物を詰めた。ゆっさゆっさ揺れて走りつらかったのだ。だからリュックにするつもりだった。


まわりを見渡す。他の選手は手ぶらが多い。みんな身軽だ。
結局、エイドも5kmごとにあることだ、背負わずにいくことにした。
ポケットには、飴玉7つ、ジェル1つ、防水デジカメ、ロキソニンだけ入れた。

雨の中、何を着て走るか?

頭:キャップ、
上:長袖シャツ、ベスト、レインウェア、100均のフード付き合羽、手袋
下:CW-Xタイツ、ショートパンツ
シューズ:ASICS


70km地点のドロップバッグには、シューズ、長袖シャツ、靴下、飴玉、ジェル1つだけ入れた。


42kmの荷物はなしだ。
荷物を預ける。ドロップバッグをゼッケン番号毎にわかれたコンテナに投げ入れる。

午前5時 陸上競技場 スタート地点

午前5時のスタートまであと15分。112kmの部は4時半にすでにスタートしている。


冷たい雨が降り続いている。


ギリギリまで雨をよけようとする選手で建物内はひしめきあっている。
満員電車のような建物を通り抜け、陸上トラックに向かう。倉庫のひさしで雨宿りだ。


それにしても寒い。


走ったら温かくなるのだろうか、不安だ。
スタート5分前。列の後方に並ぶ。


ザクっという音。


暗くてよく見えなかったが、雨で透明になった雪が残っているのだ。寒いわけだよ。
実は3日前までインドへ出張してた。気温36度から0度の世界へ。
人間っの適応力はスゴイな。なんてことを考える。


午前5時。


スタートの号砲。列がゆっくり動きだす。
ワイナイナ岩崎恭子さんに見送られてスタートゲートをくぐる。岩崎さんかわいいな。

5時10分 0キロ地点 雨の中


寒い。


2月に5時起きでランニングしたことを思い出す。あのときはマイナス7度だったっけ。それにくらべれば暖かいけど。。。


前の選手が止まった。渋滞だ。


大きな水たまりを避けようと歩きになっているのだ。
道に沿って雨が川のように流れている。時々、避けようがないほど道全体が水浸しになってる。トレイルランかアドベンチャーレースのようだ。


はじめはシューズが濡れるのを気にしていた。トライアスロンで体を冷やすために浴びた水でシューズをぐっしょり濡らして走り辛かった経験がある。できるだけシューズを濡らしたくなかったが、こんな天気じゃ無理だ。


雨が運んだ雪解け水がシューズをとおりぬける。一瞬ゾクッとする。
50mも走ればある程度の水分は吹き飛ぶ。


それにしても足元ばかり見て走ってる。まあ、顔をあげても富士山は深い雲の向こう側だ。

降りしきる雨


雨が止む様子はない。合羽のフードを被ったままだ。一歩踏み出すたびにガサガサ耳元で音がする。始めはうるさく感じたが慣れた。それよりも大粒の雨に打たれて頭が冷えるほうが堪える。


昨年72kmに出た時も雨だった。濡れたバイザーが重くなってズリ落ち視界を妨げた。トライアスロンと言えばバイザーでしょ。と勝手に思い込んでいる。どこかで見たIRONMANの写真が記憶に刻まれているのだ。


今日はバイザーでなくキャップにした。キャップのつばに溜まった水が、ランニングのリズムに合わせて左から右にほとばしる。いつまで降り続くのだろう。

12.8km地点 山中湖

山中湖に出た。夜は明けた。ぐるりと反時計まわりに進む。
70歳を越えるトラ仲間の堀内さんらと山口湖一周マラソンを走ったことを思い出す。
会社の保養所の看板もそんままだ。


湖畔の駐車場、ここから富士山が綺麗にみえるんだよなぁと思いながら空を眺める。真っ白な雲。雨は止む気配はない。そういえば8時くらいがピークって言ってたっけ。


山中湖へ向かう途中、トップの選手にすれ違った。


道の右側を走っていたら、前からオフィシャルカーが左によってくださいと声をかけながら通りすぎた。その直後、跳ぶように走る選手を見かけた。キロ4分くらいだと思う。スゴイよそんなペースで100kmを走りきるなんて。

この調子なら

18.8km地点。エイドで立ち止まる。たけのこの里を頬張る。どちらかというと、「きのこの山」派なのだがこのエイドにはないようだ。


ここまで約20km。脚は元気だ。疲れは感じない。この調子で5倍ならすんなり走れるんじゃないか。そんなことを考えてた。


昨晩、ペースを考えてた。
キロ7分なら100kmで700分⇒11.6時間
キロ7分半なら100kmで750分⇒12.5時間
キロ8分なら100kmで800分⇒13.3時間だ


5km毎のエイドに平均5分止まるとして
5分×20箇所 ⇒100分


キロ7分(700分) + エイド(100分) ⇒ 13時間20分
これを完走するための目標にした。


いまのところ、キロ7分前半で刻んできている。
エイドを5分づつ使うことはないから、大丈夫だろう。

40km地点 5時間8分 東恋路交差点を河口湖へ

小雨になってきた。
それでもまだ寒いので、合羽のフードは被ったままでいた。


この100均の合羽はどこで買ったのだっけ?出発前にクローゼットをひっくり返してたら偶然見つけた。昨年の五島長崎のトライアスロンの前日に買ったのかな。
白いビニール素材なので下につけたゼッケンは見えない。ごめんなさい。


72kmの選手と合流する。昨年出たときは100km、112kmの選手にずいぶん抜かれたけれど、
今年100kmの部で走っている自分は72kmの選手に会わない。


スタートから5時間経過。72kmの部は8時スタートなので2時間経過した。ここは100kmの部の40km地点だけど、72kmの部の10km地点でもある。さすがに10kmを2時間かけて走っている人はいないわけで、どうりで会わないわけだ。


エイドでコーヒーを飲んでいたら、いっしょに来たヤスに会った。
速いペースでかなり先を走っていると思ってたので意外だった。聞くと


「トイレが全然開かなくてさ、10分くらい並んじゃったよ。。」


そうだよな、寒かったからな。トイレ近いとそれだけのロスタイムを考慮しなくてはならないといことか。。。大変だな。。


エイドでは、味噌を付きおにぎりを2ついただいた。食べると元気になる。
エイドのお兄ちゃんは、味噌つきかノーマルか選手ごとに楽しげに聞いてた。こんなボランティアの方から元気をもらう。


ほうとう不動の特徴的なまあるい建物を眺めて、河口湖大橋にむかう。歩道が広くて走りやすい。雨はときおり霧雨のように降るだけになった。


途中のガソリンスタンドでトイレを借りた。待ち時間ゼロだ。ラッキー。
河口湖大橋をわたる。晴れていれば右後ろにくっきり富士山が見えるはずだけど今日は完全に雲の中だ。


橋を渡りきった場所のエイド、水と塩を飴玉しかのこっていなかった。
時間が遅いと飯にありつけないぞ。

52km地点 6時間40分 西浜小エイドから西湖へ、


淡々と、一歩一歩足を前に進める。
合羽のフードをとり頭を風にさらす。ひんやり冷たい風を受ける。


河口湖から離れ、坂を少し上ると西浜小エイドだ。ここは12:00が関門となっている。
ドロップバックを受け取れるエイドでもあるので、選手がごった返している。


ストーブの周りで暖をとる人、ドロップバッグを開け着替えている人、パイプ椅子に腰掛けぐったりうなだれている人、ガタガタ震えながら収容バスを待っている人、、、、


コーヒー、バナナ、きのこの山、梅干し、オレンジ、VAAM、を口に放り込んで出発。
次の、関門は本栖湖69.8km地点、ここから約20km先だ。14:30までに到着しなくてはならない。


あまりのんびりしていられないのだ。


この先、約7km先でうどんが食べられる。西浜小エイドで食べ過ぎてもしかたがない。昨年は初参加だったのでリズムがとれず毎回食べ過ぎだった。経験して、どこで何を食べられるのかを知っていると、レースを組み立て易い。初めてのレースでも、要項を熟読すれば作戦を練られると思うけど、経験にはかなわない。

55km地点 7時間5分 西湖湖畔にて強烈な眠気


エイド出発してしばらく上りが続く。体力温存のため歩く。スタスタ歩く。


たまに、トコトコ走っている選手を抜いてしまう。同じ速度だったら、蹴って体を浮かせなければならないランニングよりも、ウォーキングのほうがエネルギーを使わないはずだ。


西湖の湖畔を走っていると強烈な眠気に襲われた。
目を閉じて3歩走る、目を開けて3歩走る、


眠気はエネルギー不足だからだろうか。。。西浜小のエイドでもっと食べておけばよかったのか。とにかく前に進んだ。つぎのエイドでうどんが待っている。


雨はあがった。100均の合羽は着たままだ。

うどん

眠くて仕方なかった西湖を終え、森のエイドに着く。自分の中では、勝手にうどんエイドと呼んでいる。七味唐辛子をふりかけ、ズルズルっといただく。腹にしみ込んでいく。


60km地点 7時間40分 突風の精進湖


下り基調の道。昨年は霧でよく見えなかった場所だ。樹々が美しい。相変わらず富士山は見えないけど。


前からは速いランナーが駆け上がってくる。邪魔にならないよう左端を走る。あまり寄り過ぎると橋の欄干から落ちる想像をして怖い。


道路標識は本栖湖まで直進6km。思ったよりいいペースで走れてきたかも。でも、コースは精進湖をぐるりと回るのだ。実際には8kmあった。


雨が上がったのでそろそろ合羽を脱ごう。精進湖は静かだ。湖畔沿ってヒタヒタと走る選手が連なる。


突然ビュウと冷たい風が吹いた。こりゃ合羽脱いでいる場合じゃないな、立ち止まって改めて防寒のために合羽やウィンドブレーカーを着直している選手も多い。雨は上がったが、今度は風で体温を奪われてしまいそうだ。


曲がりくねった湖畔の道の先を見つめていると、なんだか制限時間内に辿りつけない気がしてきた。今進むべき目の前の一歩一歩に集中することにした。ペースをキープ。まずは本栖湖まで辿り着くことだけを考える。運良く辿りつけたらその先のことはその時考える。


精進湖から西湖に行くルートは、復路の選手とすれ違いになる。72kmに出ている、青木さんや伸子さんに会えるかもしれない。地面を見つめていた顔を上げ、上ってくる選手たちを見つめる。ポケットに入れてた防水デジカメを手にしてあわよくばシャッターを押すつもりでいた。


が、結局会えなかった。多分おいらが遅すぎるのだろう。すれ違う前に先に行ってしまったのだ。


70km地点 9時間10分 本栖湖エイド

関門まで残り20分。間に合った。地下道を抜けると沿道に応援が並んでいる。ナイスランです、と言われただけで目頭が熱くなってしまう。


エイド入り口で関門の係員が時刻をチェックしている。もうすぐ締め切られてしまうのだ。


ドロップバッグを受け取る。テントの下にゼッケン順に綺麗に並べてある。自分が近づくと、3557番!と伝達されてすぐにバッグを手渡された。


引き渡しを待つバッグは軽く数百はありそうだ。関門まで残り15分。残念ながら選手に開けられることのないバッグも多いのだろう。


補給の前に着替えようとバッグを開ける。布製の赤い紐がじっとり濡れている。雨の中運ばれてきたのだ。今朝スタートで預けた荷物がきちんとエイドに届けられ、選手の手に渡り、再びゴールに戻される。この滞りないオペレーションに感謝する。


シューズとソックスは乾いてきてたので替えず。長袖Tシャツを取り替えた。1ダースほど用意されたパイプ椅子は空いておらず、アスファルトの上にしゃがんで着替えた。雨が止んでいて良かった。ここで土砂降りだったら着替える気力もないだろう。


Tシャツは思いのほか濡れていた。寒かったけどここまで70km走って来たのだ、相当な汗をかいたはずだ。新しいTシャツに着替えると、なんだか気分もリフレッシュした。ここから青梅マラソン30km分、あとわずか!?だ。


バッグのジェルを飲み、ポケットの飴玉を入れ替える。雨で重くなったキャップはここでバイザー変えた。ずっと羽織ってた100均の合羽は小さい折り畳んてポケットに詰め込んだ。再び寒くなった時に着るつもりだ。詰め替えたバッグをコンテナに投げ込む。コンテナは数百番毎にずらりと並んでいる。無事ゴールで引き取れます様にと祈った。


テントに戻り改めて補給。文明堂のカステラを貰おうと並ぶ。
係員が、


「これでで最後でーす。」


と叫ぶと、並べた5切のカステラめがけて無数の手が飛んできた。運よく最後の一切れにありつけた。ラッキー。


温かい紅茶、冷たいコーラ、バナナ、チョコ、梅干し、オレンジを口に放り込んだ。


さて、出発しようと隣を見ると大型バスが停まっている、なかにはどんより疲れた選手が座っていた。収容バスなのだ。ここまで来てリタイアはさぞ悔しいだろう。。。

9時間25分 本栖湖出発


関門時間の2時半まで残り5分。出発だ。


エイドを出ると、すぐにゼッケンチェック。これまでも何度かゼッケンチェックがあったが透けない合羽のせいで見えなかったと思う、すいません。


出発して間もなくヤスにすれ違った。とっくに前で走っていると思っていたのに。
すれ違いながら、関門だぞ、急げ!と叫んだ。


本栖湖エイドむけて駆け込んでくる選手が続く。
走りながら選手どうしが声をかける。


「あと少しだ、間に合うぞ、がんばれ」


向かう選手も必死にペースアップ。
ひとりでも多くの選手が間に合ってほしい。。。

72km地点 9時間35分 30km走れる気がしない

本栖湖を出たものの、走る気力がなくなっていた。この先30kmなんてとても走れる気がしない。


そこで考えた。


イムリミットまで4時間30分。30km進めばよい。10kmを90分で進めばよいのだ。つまりキロ9分でずっと進めばよい。

インターバルトレーニング

西湖までしばらく上り基調だ。1km毎にランとウォークを繰り返すつもりだ。まずはウォークで1kmのラップを測る。ビィィーンとGARMINが知らせる。


8分57秒


キロ9分を切っている。このペースでずっと歩き続ければ時間内にゴール出来るはずだ。ただし、一度も立ち止まることなければだが。


次の1kmを走る。


7分47秒。


約1分稼げている。残り30kmを15本のインターバルトレーニングに見たてて進み始めた。30kmは一気に走れる気がしない。細切れにすれば到達出来そうだ。なんだかライフハックの記事に出てきそうだな。


前からは往路の選手がポツリポツリと本栖湖に向かっている。足取りは重い。もう関門の時間は過ぎている。それでも自分の決めた区切りまで、前に進んで行くのだ。


ラン&ウォークを繰り返していると、他の選手と抜きつ抜かれつになる。特に、黄色いウィンドブレーカーの選手と、3桁ゼッケンの112キロの選手と何度もすれ違った。


ちなみに、ゼッケンの色がカテゴリごとに異なっている。112?は白、100?はクリーム色、72?は水色で一目でわかるようになっているのだ。


僕が歩いていると、彼らにひたひたと後ろから抜かれ、走り出すとあっと言う間に彼らに追いつく。平均するとどちらも同じペースになるけど、走り続けるほうがエネルギーを使うと思う。


黄色いウィンドブレーカーの選手は、河口湖へ向かう長い下りで追いつけないほどずっと先に行ってしまった。僕は下りでも律儀にもきっかり1kmずつラン&ウォークを繰り返した。

79km地点 10時間41分 2度目のうどん

エイドに到着。うどんをすする。七味唐辛子は品切れだ。残念。
昨年はここで雨だった。しとしとと雨が降る中縁石に座ってうどんを食べた。
今年は雨は止んだ。おなじように縁石に座りうどんをたべる。


座ったり、立ったりするとき、膝がギシギシ音をたてる。
あまり長居している余裕はない。


おかわりをしようと思ったが、1杯で我慢だ。
胃も荒れてきて、そんなに食べても消化できそうもない。

86km地点、11時間37分 急いでエイド

下り坂の途中。西浜小だ。自分で決めた1kmのラン区間の途中でエイドになった。


手早く飲み食いしてエイドを後にする。エイドを200メートルほど進んだところでGARMINが知らせる。8分59秒。


エイド込みで9分来れてる。この調子だ。

89km地点、12時間1分 河口湖畔を行く

湖畔を進む。UTMFは来週だ。昨年はUTMFゴール直前でこの道を走ってたのをTVで見た。
夕暮れが近づいてきた。復路は合羽を着ずに来たけど、寒くてまた羽織るかもしれない。


本栖湖の後、ラン&ウォーク繰り返していた僕は、後ろから来たヤスに抜かれていた。


そのヤスに、西湖公民館81km地点のエイドで再び会った。僕がエイドのトイレに行っている間、先に出発していたヤスは、200mほど先にある芝生で横になってた。


「大丈夫か!?」


と声をかけると、


「ちょっと、休んでから行く」


という。まあ声は元気そうだから大丈夫だろう。
でも、ここからキロ9分は死守しないとゴールが危ういぞ。
そう思いつつ別れた。無事に復活してほしい。


河口湖まで出ればあと少しと思ってたがなかなか着かない。最後の5kmの上り坂の下にエイドがある。


5人の集団が僕を追い抜きながら話している。


「最終エイドに1時間前に着けばあとは歩いてもゴールできる」


そうなのだ、最後の劇坂は走る気がしない。
ずっとインターバルトレーニング風に走ってきたけど、最後の5kmは歩きに決めた。


河口湖を離れ、大通りの歩道を走る。徐々に暗くなってきた。


昨年走った記憶では、そろそろ最終エイド「ステラシアター」のはずだけど、なかなか着かない。足の裏は巨大な靴ずれになったかのようだ。踏み出すたびに痛い。本栖湖で、新しい靴下にしていたらこんなことはなかったのか。今となってはもはやわからない。


それにしても、あれほどぐっしょり濡れていた靴は、すっかり乾いている。足からは相当の熱を発しているのか、たまたま風通しがよくて乾いたのかよくわからない。


ステラシアターのエイドに向かう途中、大型バスとすれ違った。途中棄権のバスかと思って窓を見ると、中学生が乗っている。少女と目が合うと手を振ってくれた。他の生徒もみな我々選手に手を振ってくれている。
なんだかうれしくなって、スーパーマリオ風にジャンプしてみた。車内の生徒もうれしそうだ。
が、このジャンプで1キロ余分に走ったくらい疲れた。レース終盤は余分な動きは禁物だな、、、ふう、もう少しだ。

95km地点、12時間50分 ステラシアター 制限時間まで1時間10分


ようやくここまで来た。

あとはウィニングロードを上るだけだ。いや勝ったわけじゃないから何ロードなのだろう。昨年はがむしゃらに走り抜けた坂。長さを知っているから、走る気も起きない。


まわりの選手の99%はひたひたと歩いてゴールを目指している。ふと、前をみるとデビルマンがいた。暗くなってきた林道に、デビルウィングのふちにつけた電飾が光る。すごいなあの格好で100km走るとは。それにしても、本栖湖への細い歩道のすれ違いはどうしていたのだろう。「ちょっとその翼、ジャマです」とか言われそうだ。


今日一日長かった。ただ一歩一歩ひたすらに進んでいたらいつの間にか着いた感じ。。。いや、まだ着いていないけど。本栖湖からの30kmは特に、GARMINにお世話になった。GARMINがなければキロラップもわからないので1kmごとにラン&ウォークしようなんて思わなかっただろう。終盤まで飽きずに進むことができた。


ああ、もうすぐ終わりか、と思っていると後ろから声をかけられた。


なんと、高校時代の友人だった。


過去にも、珠洲トライアスロンや、つくばマラソンでいっしょになったことがある。まさかこんなところで会うとは。


歩きながら2人で写真を撮る。


ゴールはもうすぐだ。日が落ち足下が見えない。
残り1.2kmの表示で再び走り始めた。


しばらく歩いていたのですっかり体は冷え、足はガチガチに固まっている。


イタタタと叫びながらジョグをする。下りも楽ではない。一歩踏み出すたびスピード以上の重さ足にのしかかり痛い。でももう少しだ。がんばれ俺。


陸上競技場が見えてきた、右手に曲がるとまだ沢山の人が応援してくれている。

そして、ゴールへ


「おめでとう!」


「おかえり!」


「あと少し!がんばれ!」


沢山の人に声をかけてもらう。


陸上競技場のトラックの向こうに照らし出されたゴールゲート。
ようやく着いた。長かった。。。長い一日だったよ。


13 時間 50分 27秒


ゴールして、感動とか、達成感とか、、、
なんかそんな感じじゃない。


ただ、心の中は静かな感じだった。
今日一日、ひらすら自分と向き合う、そんな時間だったのかもしれない。

ヤスも制限時間5分前にゴール。よかった。。。

翌日

富士五湖ラソンの翌日、いつも通り会社へ行った。
いつもと同じ時間に家を出たけど、電車一本乗り遅れた。


しかたない、歩く速度が半分以下なのだ。階段をゆっくり上る。廊下をゆっくり歩く。


少しペースを変えるだけで普段の景色が違って見える。
それだけでも100km走った甲斐があった。


人生は素晴らしい。


おわり