peicozy's blog

マラソン、トライアスロン、ブルベの完走記と、日々思うこと

スタート

のんびり、ピリピリした感覚なし

                                                                                                              • -

プゥワーァァァァというホーンの音色

駐車場のわきを抜け右に折れる。1万5千人が同時に走り出すつくばマラソンの直後だったせいもあるが、500人たらずの鋸山トレランはこじんまりしている。こじんまりしていて好きだ。マラソン大会では巨大な人の流れが途切れることがないが、トレランは道路を占有する時間はわずかだ。


舗装路を2キロほどいくとじょじょに上り坂だ。舗装路が終わり砂利道になった。いよいよ始まったなと思った。ポケットから防水防塵デジカメを取り出して走りながら撮影した。


コースを誤らないように、確認しながら走るようにと競技説明があった。今はまだ集団で前後に人がいるので大丈夫だ。


熊よけの鈴の音をならしながら走る人、だだのディパックを背負う人、ランニングシューズの人。さまざまだ。思い思いに楽しんでいる感じがする。


いつのまにか再び舗装路になっていた。登りの傾斜が急になってきた。歩幅を小さくしてタカタカ上る。登りは歩くときめているのだろうか。ちらほら歩く人もでてきた。


広い道は終わり、係員の指示にどおり左に折れた。森の中に入っていく。皆、一列になって木々の中を走り抜けていく。そうそうこの感覚♪。陣馬山やハセツネのコースで走ったことを思い出す。


列がぴたっと止まった。急な上り坂になったのだ。皆、黙々と上る、わきを駆け上がるほどコース幅はない。ポケットから塩タブレットを取り出し口に放り込む。ハイドレーションから水を2口飲んだ。


自分の集団と前の集団に少しひらいてきた。道幅が広がったときを狙って前に出た。前の集団に追いつこうと少しだけペースアップする。木々が視界から飛んでいく。気持ちいい。


前の集団に追いついた。選手のシューズを眺めながら離されないように付いていく。苦しくはない。ちょうどいいペースだ。


視界がひらけた。左手に見ると海がみえた。カメラを取り出して写真を取った。
ここが鋸山の頂上か?(実はもう少し先だったようだ。)さらに行くと頂上らしき場所に着いた。ベンチに腰掛けて休憩している人もいる。何枚か写真を撮り進んだ。

濡れた階段、落ちるような下り階段

鋸山からの下りに入った。階段だ。だだ、ものすごい急な階段。手すりがついていて助かる。前日の雨で木製の階段はヌルヌルしている。階段の角に乗ろうものならバナナを踏んだのび太くんのように一回転するくらいコケそうだ。怖いょ。


階段の下からはトレッキングで上ってくるグループが数組いた。駆け下りていく選手を通すためにコースわきに留まってくれている。申し訳ない。「がんばって」と声をかけてもらった。ありがとう。


落ちるような階段がおわりほっとした、普通に走れるぞ。

第1エイドまでで2時間も。。。

エイドにたどりついた。時計をみたら2時間以上経過している。まずい、第1エイドは10km地点にある。総距離28kmのレースでまだ1/3しか来ていないのに2時間も使ってしまった。このまま行くと制限時間の6時間にひっかかるかも。。。


エイドでは、水とアンパンをいただきすぐに出発。トライアスロンのおかげで?もぐもぐしながら走るのは慣れているのだ。ハイドレーションにはまだたっぷり水が残っている。


シングルトラックは終わり道幅が広がった。
待ってましたとばかりペースアップする選手。自分はこつこつとマイペースで走る。


いい天気だ。12月にしては暖かい。切り立った岩と木々の間にに青空が広がる。前後の選手はまばらになってきた。カーブにさしかかると前を行く選手が見え隠れする。


キロ6分のペース。ザッザッという足音。流れていく景色。タイムはどうでもいいからこの瞬間が永遠に続けばいいのになと思った。
追い抜きざまに思わず「気持ちいいですねぇー」と選手に声をかけた。選手は驚いた様子。そうですねと言った表情でこやかに笑ってくれた。

再び山へ

レース中盤はなだらかな上り下りのなか景色を楽しみながら走った。係員の指示どおり右手の道に入り再び山の中へわけ入る。


この山は雨の影響がかなりある。湿った土というレベルではない。ねちょねちょにこね回されたような泥の中を走る。できるだけ硬そうな泥を狙って足を落とすのだけど、ずぶずぶっと入り込んでしまう。


トレランシューズだからまだいいけど、ベアフットやランニングシューズの人は大変だろうなと思った。


登り坂も急だ。坂ではなく登山のようだ。使うのは脚だけじゃない。手を使って木を支えによじ登る。四肢を使いながら、ああこの感覚を忘れていたな。と思った。小さい頃、木登りをした時の感覚、ジャングルジムで遊んでいた時の感覚。



そういえば、高校の体育のときに四つんばいで駆けるリレーをした。横一列になった生徒が大きく足を開き、足の間を四つんばいでジグザグに走り抜けるリレー競争だ。四つんばいでで窮屈そうに走る生徒を尻目に、自分は獣のようにぬるぬると足の間を駆け抜けた。当時校内で怖くて有名だった体育の先生に褒められたのを覚えている。


そうか、トレランは人間が獣だったことを思い出させてくれるスポーツなのかも!

トンネル内は視界ゼロ

突然トンネルが現れた。照明はない。入り口から数歩入るとすでに足元は見えなくなった。道は平らな岩になっているのでつまづくことはなさそうだけど、出口から差し込む光だけでは足元を照らしてはくれない。思わず走るのをやめてそろりそろりと足を進めた。アドベンチャーコースとは聞いていたが、こんなコースを走るとは!


この後もう一箇所トンネルがあった。2つめのトンネルには、工事中に警備員が使う誘導灯がトンネルの最闇部に転がしてあった。照明の替わりにはならないけど、ないよりはいいな。ハセツネや信越五岳、もちろんUTMFも夜走るんだよなぁって思い出した。
今回のように日中のレースでもライトはあったほうがいいのかもと思った。


また、誘導灯がトンネル内に転がっている姿は、本当に警備員が倒れているのでは!と想像をかきたててくれた。

ひとたび雨が降ったなら、

泥の道は終わり、固い地盤になった。道の中央が深くえぐれている。ひとたび雨が振れば道は川となってしまうのだろう。幾度となく流れた雨が道を削り蛇行する川をつくりあげていったのだ。蛇行する枯れた川を左右のステップでよけながら走った。
そういえば、時折ピキンっとふくらはぎが反応する。攣りそうだ。あわてて塩タブレットカロリーメイトのジェルを飲んで栄養補給した。


山を抜け里山に出た。館山道をかすめる。久々の舗装路だ。思ったより太ももに疲れが溜まっている。ロードレース並のペースにはとれも上げられそうにない。


近所なのだろう。おかあさんと子が道端で応援してくれていた。まばらに通りすぎる選手たちにかわいい声援がそそがれる。


平坦な道が続くけど、キロ6分が精一杯だ。2人で談笑するしながら走る選手に抜かれた。皆、楽しんでいる。こちらもいい気分になる。


里山のゆるやかな登り坂の先は行き止まり、第2エイドだ。ここでも水を一杯、塩をなめ、アンパンをほおばり立ち止まらずに先に行った。三度、山に入り込む。


山中の登りは完全に歩きだ。ゆるい傾斜でも駆け上がるほど脚力が残っていない。前後には人がちらり見えるくらい。

気の抜けないコースが続く

コースは下り、木の根がびっしりと張られている。根に乗るとあっというまに滑って転んでしまう。根の間のわずかな土を探し、つま先をかけるように歩く。


ロープなしでは降りられない。ここがコースなのか!?ロープにつかまりながら下った。地面はよく滑る泥だ。ロープにつかまりながら滑り降りたすじが何本も泥に彫られている。


個人的にはゴール前の5km(最後の上り下り)がいちばん変化に富んでエキサイティングだと思う。

採掘場〜ゴール

ススキがゆられている、もうすぐ上り坂も終わりだ。視界がひらけた、砂利の道が続いている。左右には硬い岩を切り崩して運び出した岩の後が続いている。


採掘場を終えると下り基調だけど、脚力は思いのほか残っていない。12月とは思えない日差し。暑くもなく寒くもなくちょうどいい気候。


約4時間半前にスタートした小学校に戻ってきた。ゴールした。初トレラン完走。
思った以上に脚にきている、しばらくトレランはいいかなと思っていたけど、こうして思い出していると、あの感覚をもう一度確かめたくなってきた。