peicozy's blog

マラソン、トライアスロン、ブルベの完走記と、日々思うこと

BRM602諏訪湖600km 完走記

自転車に乗っていると、いろんな風に吹かれる。自分が漕いで生まれた風に吹かれるのが、一番好きだ。


ブルベ

Twitterを眺めていたら、一日で、数百キロを漕いでいる人たちがいることを知った。コンビニで買ったレシートの画像をアップしてた。



初めは意味がわからなかったけれど、それがブルベというイベントで、コンビニのレシートはチェックポイントを通った証明として使われているのがわかった。なんだかスタンプラリーみたいで面白そうだ。



工事現場のような黄色いベストを着て、コンビニの駐車場の片隅で、脚をあげて休んでいる姿が、なんだかかっこよく見えた。雨も、風も、関係なく淡々と漕ぐのがかっこよく見えた。



ロードバイクを買った頃から、長く、遠くまで漕ぐことに興味があった。トライアスロンに出た時も、速さや順位ではなく。遠くまで走り切ったとき、どんな気持ちなるのだろうということに興味があった。



以前、自転車で世界一周した旅行記を読んでたことがある。何年もかけて、いろんな国を自転車を漕ぎながら旅するなんて、素敵だなと思ってた。



何年も、ではなくていいから、何十時間も自転車で、漕いで遠くへいってみたかった。


ブルべのすべて

ふと立ち寄った本屋。本だけでなく、テーマごとに本や関連グッズも置いている素敵な本屋だった。



自転車コーナーにいくと「ブルベのすべて」というタイトルの本が目に留まった。ブルベをやってみたいなと思っていた矢先、なんだか背中を押された気がした。



200kmのブルベ参加からはじまり、300km、400km、600kmと、徐々に距離を伸ばしていく様子が、体験記のように描かれていて面白かった。知らなかったことに付箋を貼りながら読んだ。


装備

読んだ熱が冷めないうちに、ブルベに必要なアイテムをそろえた。

道路交通法で義務付けられたベル、

・夜間走行に必須なライト、

・安全のためのヘルメットにつけるテールライト、

・荷物をコンパクトにまとめるサドルバッグ、

・ドライバーに発見してもらうためのテールライト。

・ブルベであることが一目でわかる反射ベスト



反射ベストは少し悩んだ、軽くて自転車向けにつくられたシンプルなタイプか、実際の工事現場で使われるようなポケットが沢山ついているタイプか迷った。



ブルベ中は、コンビニ等でバイクから離れる時に、ブルベカードや財布や携帯など、思いの外身につけるものが多いことが分かった。空気抵抗を考えると自転車向けのほうがよいけれど、ポケットが沢山付いているタイプを選んだ。



シューズも新調した。これまでのシューズはサイズが大きくて、ペダリングの時にどこかパワーが逃げている気がしてた。



輪行バックも準備した。トラブル時や疲れ切った時に電車で帰れるように。


  • -

あれこれ選んだアイテムは、すべてネットで注文した。2018年の冬。

大流行してたインフルエンザA型になり、高熱でベッドのうえで寝転がってた。

文字どおり、「熱が冷めないうちに」注文してしまった。



あとは出場するブルベを決めるだけだ。


「もしかして諏訪湖まで来る?」

重要アイテムの反射ベストが届いた。なんだかうれしくて、facebookに写真を載せた。友人からコメントが付いていた。



「もしかして諏訪湖までくる?」



友人は諏訪湖の近くに住んでいる。彼はヒルクライマーだ。自転車で遊びにおいでよ、いっしょに漕ごうぜ、という意味だと思ってた。



「春になったら行く。あそぼーぜ♪」



と返事すると。



「いやいや、6月だろう?AJ西東京BRM602!」



「???」



知らなかった。



諏訪湖まで行って帰って来るという600kmのコース。AJ西東京のWebサイトに行くと、素敵なイラストマップが掲載されていた。



600kmか、、、、、。



果てしないな。

イラストマップにはスタップからメッセージがのっていた。



「無事に帰ってくださいね。(電車でもいいですよー。)」



なんだかじわーっと、こころがあたたまる。行けるとこまで行ってみて、帰りは電車でもいいから、この素敵なコースを楽しんでみてね。



そんな風に言われた気がした。


      • -

昼にランニングしている時、数百キロも漕いでいる自分を思い浮かべてみたけれど、やっぱり想像できなかった。


3月4日

BRM602諏訪湖600kmにエントリーした。

エントリーしてしまった。

完走できないだろうな。


でも、どこまで行けるか試してみたい。

そんな気持ちが勝った。

スタッフさんも無理だったら電車でいいよといってくれているし。



制限時間40時間。



24時間をこえるレースに出たことがなかったので、ワクワクする。もちろん夜中に自転車を漕いだ経験もない。まあ、ブルベはレースではないけれど。



エントリー費2300円。



トライアスロンの数万円に比べると格段に安いエントリー費だ。ブルベは営利目的での実施を禁止されていることもあって、運営費としての必要最低限のエントリー費になっているのだろう。



距離あたり、時間あたりの費用を計算する。

・1kmあたり、2300/600 = 3.8円/km

・1時間あたり、2300/40 = 57.5円/時



これまでこんなに安く楽しめるレース(繰り返しになるがブルベはレースではないけれど)イベントはあっただろうかと一人で笑う。



教えてくれたK田にはエントリーのことは内緒にしておいた。やっぱり出るんだって驚かせたいのもあるけど、そもそも諏訪湖までたどり着く自信がなかった。


バイク

自分が所有しているバイクは、キャノンデールのCAAD9と、おなじくキャノンデールのTTバイクのスライスだ。



CAAD9はトライアスロンを始めた頃の2009年に購入した。最長で2013年ケアンズのアイアンマンレースで180kmを漕いだことがある。



スライスは2016年に手に入れた。2017年の宮古島トライアスロンで漕いだ157kmが最長となる。



長い時間漕いだ時の体のダメージをくらべると、アルミフレームのCAAD9にくらべてカーボン製のスライスのほうが明らかに楽だ。



諏訪湖600kmにはスライスで行くことに決めた。



少し不安だったのは、ブルベの大会によっては、DHバーなどの突起物がついたバイクでの参加を禁止しているところがある点だった。



諏訪湖600kmの要項には特に制限はなさそうだ。安心した。



3月の頭から、しばらく乗っていなかったバイクを再開した。距離は圧倒的に少ない。



3月:215km

4月:532km

5月:291km



一ヶ月かけて漕ぐほどの距離を一度に漕ぎきるのか。5月連休中は、190kmを漕いでみた、途中交通量が多いところを漕いだとはいえ、12時間近くかかり、しかも終盤は力なく惰性で進んでいるだけになった。



これの3倍もあるのか、、、と途方も無い感じがした。


マップ

地図はどうしようか悩んだ。GARMIN520Jをふるさと納税で手に入れてから使っていないのを思い出し、日本語版のデータを入れ、まずは使えるようにした。



520Jには交差点をガイドしてくれる機能があるので、それを利用する。ブルベの大会は、与えられたキューシートと呼ばれる情報を元に、自分で道を確認しながら進む。いままで出たトライアスロンの大会は、必ず誘導員がいて、道を間違えることはないけれど、ブルベの大会はすべて自分の責任で道を進む点が大きく違うのだ。



600kmのデータをRide with GPSのサイトからダウンロードし、520Jに入れた。マップをみるとえらく直線的なルートが描かれていた。確認すると、PC(チェックポイント)のデータだけインストールしていたことに気が付いた。あらためて、全ルートをダウンロードしインストールする。



起動しない、、、



マップ情報が大きすぎるのか、起動しない。ルート上でポイントを500ポイントに絞ったデータのダウンロードは有料会員になる必要があったので諦めた。



どうしよう。



キューシートを頼りに進む?



いやそれは無理だ。



キューシートを眺めてみても、自分の居場所と、どうやったら正規ルートに復帰できるかは示せない。



調べた結果、使い慣れたGoogleマップを使うことにした。Googleマップにマイマップという機能がある。ルート情報を保存していつでも読みだせるようにした。これでルート確認は大丈夫そうだ。問題は、走行中に確認できないことと、バッテリーが切れたらおわりだということだ。



モバイルバッテリーを購入し、520JとiPhoneに充電しながら進めるように準備した。


1週前

睡眠不足の中で漕ぐことを想定して、眠気対策として大会中カフェインが効きやすい体にしておこうと思った。一週間前からカフェイン制限をした。コーヒーや緑茶などのカフェインが含まれる飲み物をとらないようにした。当初は一ヶ月前から制限しようと思って一度試したら、1週間ほどで効果がありそうな気がしたので、1週間にした。



大会が近くにつれ、週末の天気が気になる。梅雨も近い6月のはじめだ。土日には雨マークがついている。雨カッパを着て漕げるだろうか。ブレーキシューがもつだろうか。600kmもの距離、予備のブレーキシューがいるのではないか?こんなことならずっと気になっていたキャニオンのディスク仕様のバイクを買っていけばよかった。。。。ぐるぐると考え頭の中をめぐる。



神様が不安な様子をみていたのか、予報は曇りから晴れに代わり、雨の心配がまったくなくなった。



これはついてるかも。



そう、ぼくは、いつでもついてるんだ。


6月2日

3時起床。

ボトルに粉飴と水をつめて出発。

受付は4時だ。



外はまだ暗い。



DHバーのひじかけパッドの下に、それぞれつけたVolt800。右を点灯させた。ひとつは、会社の自転車友達Yから借りた。



600kmのブルベに出ることを伝えると、Yは嬉しそうに貸してくれた。ありがたい。



スタート地点の淡嶋神社に向かう。

家から町田街道をいけばいい。

迷うことはない。



お宝なんとかという店舗が見えたらを右に曲がればいい。クルマでなんども走ってる、知ってる。



道を曲がる。

受付時間の少し前につきそうだ。

順調な滑り出し。。。。



あれ、



どこだろ?

淡嶋神社って。

立ち止まって地図を確認する。



お宝なんとかっていうホビーショップは、もう一店舗あって、ここではないらしい。少しでもバッテリーを長もちさせたいのにすでにスマホをつかってしまった。



スタート地点がわからずに、DNSというオチは免れた。

うっすらと明るくなる空。

淡嶋神社についた。


スタート前

スタート会場にライダーが集まる。



ハンドルの中心にDHバーのような一本角が出たようなバイク。Twitterでみかけたことがある、たしか5月に本州一周TTを完走した人だ。すごいなぁ。



前後に布製のバッグをつけたバイク、バックパック背負ってる人、メットにつけたカメラ。



いろんな人がいて面白い。



トライアスロンと違って、ピリピリした感じはない。

これから始まる長い旅の前の、ゆったりとした時間、ワクワクした感じがする。



受付で、ブルベカードを受け取る。



カードには、あらかじめ自分の住所と名前が印刷された紙が貼られ、各PCの場所と距離が記載されている。



はじめてのブルベカード。



レシートを無くさないようにとの配慮から、クリップまでつけてくれている。ありがたい。



受付で名前を伝えると、なんだか芸能人みたいな名前ですねと言われる。昔、ジャニーズに同性同名のアイドルがいたのだ。ブルベのスタッフの年代はそんな年代だ。



スライスを植え込みに立てかける。背中から朝食代わりのソイジョイをかじりながらしばし待つ。


ブリーフィング

ブリーフィングが始まる。



安全第一で帰ってくること、帰宅までがブルベであること、昨年は天気が荒れて完走者は10人程度であったこと、数年前はドクターヘリで運ばれた人がいたこと、PCのコンビニでは店舗のガラスにたてかけないこと。



2週前の試走では、夜間や早朝はかなり冷え込んだけれど、この土日は大丈夫そうだ。逆に暑すぎて熱中症に注意が必要なくらいだ。



自分ににとってはじめてのブルベ。

スタッフの言葉ひとつひとつに注意する。

雨には当たらなそうだ、ついてる かも。


  • -

ブリーフィングが終わり、装備チェックからスタートとなる。



2名のスタッフが、ライト2灯、ヘルメットにつけたテールライト、バイクにつけたライト、ベルを確認する。



ブルベカードを見せながら、



「はじめてのブルベなんです!、いけるところまで行ってみようと思います。」



と嬉しそうに話すと、

スタッフのかたはブルベカードを見せながら、



「そうか、がんばってね、途中棄権のときは必ずこの連絡先に電話してね、ここだよ。」



と念入りに説明してくれた。

この時は、自分もスタッフも、どこまでいけるのかわかていなかった。


スタート〜通過チェック

装備チェックを終え、各自スタート。号砲のピストルも、ラッパも、声援もない、静かなスタートだ。



6月2日土曜日。午前5時。



街はまだ眠りから醒めかけで、ひんやり冷たい空気をまとってる。

通過チェックのセブンイレブン七里ガ浜までは39km。



80名弱のライダーが、信号ごとに、数名の小さな塊にちぎれていく。

チェックポイントまでの道はあまり頭にはいっていなくて、前に見えるライダーを目印に漕いでく。



スタートから間もないコンビニで、早くも補給する人もいて、思い思いで面白い。信号待ちで、まえのライダーとちぎれ、見えなくなると不安になる。この道でよかたんだっけな。



遠くにかすかにみえる、黄色い反射ベストをみて、安心する。



いよいよ長旅の始まりだ。

のんびり行こう。

一度海に出れば、知ってる道だ。



後ろからジーンズのライダーに抜かれる。

すごいな、600kmをジーパンで走りきるのか。

あっという間に見えなくなってしまった。



藤沢を過ぎ、線路が道路に埋め込まれてる。緑色の江ノ電が走るわきをぬける。



信号の先は海。

青空。

自転車日和だ。



信号を左折し、134号を進む。

七里ガ浜のセブンまで折り返しルート。

すでに通過チェックを終えたブルべライダーが反対車線を行くのが見える。



トライアスロン個人競技なので、短い距離のレース以外はドラフティングを禁止されている。ブルべも個人のちからで進むのだけれど、同じタイミングになったブルべライダーと一緒に走っても問題ない。超長距離だから、誰かと漕いだほうが楽だろうな。


はじめてのレシート

通過チェック

七里ガ浜セブンイレブンにつく。



時刻は、午前7時。

1時間56分経過。



思いのほか時間がかかった。

市街地は、信号待ちでストップアンドゴーなので、時間がかかるのだ。

バイクを植え込みに寝かせるように置く。何を補給するかノープランだ。



暑くなりそうなので、塩分補給のために、種無し梅干し。エネルギーとして、ミニアンパン4個入りを買い、ひとつかじって残りは反射ベストの左ポケットに入れる。



ポケット便利だ。



はじめてのブルべではじめてのレシートをもらう。

なんだかうれしい。



大切に、ブルべカードに挟み込む。

これが、ここを指定時間内にに通過した証になるのだ。


  • -

バイクに戻ると、サドルバッグに鳥の糞がついていた。ハトか、それとも、トンビか?糞はまだみずみずしい感じ。この先数十時間も風にあたれば、糞も乾いて消えるだろう。適当にふいて通過チェックを後にした。



いい天気だ。

〜PC1 ローソン伊豆熊坂

次のPCは144km地点。



ローソン伊豆熊坂。

いつもの134号。



伊東までは知っている道だ。地図の確認も要らない。

左手に江の島が見える。



青空が気持ちいい。

ふと、立ち止まって、波打ち際まで行って、ひんやりした波に触れたくなる。



きょうは先に進む。

どこまで行けるか試すのだ。



TTポジションで、どんどん進む。

小田原で信号待ちで、話しかけられる。



「スライスを走ってるのを初めてみました!、DHバー先端にシフトレバーがあるんですね!」



キャノンデール乗りのM山さん。ブルべについていろいろ教えてもらいありがたい。トライアスロンをやっていることを伝える。



「はじめてなんですけどね、どこまでいけるか試そうと思って」



トライアスロンやってるなら、脚力あるから大丈夫ですよ、600kmいけますよ。」



うれしいけど、いつ脚が終わるか不安だ。


  • -

小田原を過ぎ、海岸線を行く。



じりじりと暑くなってきた。



熱海の手前のアップダウン、後ろからなにやら曲が流れてくる。スピーカーから曲をききながら漕いでいるブルべライダーだ。楽しそうだ。



電源はどうしてるのだろう、漕ぎながら発電してるのかな。



熱海から先の、熱海城のトンネルはキューシートのとおり海岸沿いに迂回する。むこうに初島が見える。タクシーから降りて、記念撮影しているカップル。自分も立ち止まり、初島をながめる。いい天気だ。いい天気すぎるくらい。



トンネルをいくつか抜ける。海で泳げるくらいの気温。

伊東にいくなら、ハ、ト、ヤ、

なんて言葉があたまをぐるぐるする。



伊東に到着。



大学1年の夏休み、伊東の温泉宿で泊まり込のバイトをした。その宿の前で記念撮影。夏休みの一か月、炊事場で朝から働いて、昼からは海で寝転んで、夕方からまた仕事してた。もう、25年以上前のことだ。懐かしい。



感傷にひたるのもそこそこに、ペダルを踏みなおす。


  • -

伊東から伊豆半島の根本を、横切るのだ。

ここからは、未知の道だ。



海と別れ、山にむかう。

市街地を離れ、自動販売機さえもなくなってくる。



まずいな、水が切れてきた。

PCまで持つか?

どうする?



信号の門にコンビニが見えた。

迷ったが、安全をみて立ち寄る。



ポカリ1リットルを手に入れ、ボトルに補充し、のどを潤す。

同じように、コンビニに立ち寄ったブルべライダーに、暑いですね、と声をかける。



消耗していく自分。

どこまでいけるのだろうか。


  • -

コンビニを出てから、サングラスの右が曇っているのに気づく。額から流れた汗が、レンズを濡らし、乾いてしまったのだ。



山間の上り坂でスタッフが写真を撮影してくれた。ありがたい。きついところに待っていてくれるだけで、うれしい。クルマで先回りするだけでも、大変だろうな。。。



T字路を右折すると、下りになった。



反射ベストのメッシュの隙間から、涼しい風が通り抜ける。気持ちいい。そろそろPCか。ポケットにのこっていたアンパンを口に放り込む。

  • -

修善寺駅近くで狩野川を渡る。右折したらPC

まで残り2kmだ。

到着した。


PC1 144km地点。

時刻 6月2日土曜日、12時。

経過時間:7時間13分



あと、450kmある。



果てしないぞ。

疲れてるけど、ここまで、膝が痛いとか、おなかが痛いとか、局所的な痛みはない。



レシートをもらいブルべカードに挟み込む。

つぎのPCは約40km先か。



七里ガ浜の通過チェックから、ここまでの100kmに比べたら短い。がんばろう。


  • -

PC1を出たのはいいが、道がよくわからない。



女性ライダーは、橋を渡る方向に走っていく、

男性ライダーは、狩野川沿いのサイクリングロードを行く。



どちらなのだろう。

立ち止まって、地図を確認する。



男性ライダーが正しそうだ。

視界に消えるまえに、後を追う。


  • -

海だ。

左手に海が見えた。



伊豆半島を横切り、反対側に出たのだ。

我ながらすごい。



江浦湾沿いに漕いだ後、沼津市役所を左折する。


  • -

千本松原

大学を卒業して就職したのは印刷会社だった。



一週間弱の新入社員研修のあと、印刷工場がある沼津にやってきた。工場で一か月の研修をうけたのだ。当時、仲間とすごした社宅は、今は賃貸のアパートになっていた。工場は今でも稼働していた。なにもかもが懐かしい。まるで、思い出の旅みたいだ。みんな元気だろうか?


  • -

千本松原をみながらそんなことを思い出した。



じりじり照り付ける日差し。暑い。松がつくってくれた日陰がありがたい。ハンドルのポジションをいろいろ変えてみる。うしろからブルべライダーに抜かれる。元気だな。



千本松原は全然おわらなくて、これはきっと、千本ではなくて、万本なのだと思う。



抜いていったライダーは、はるか向こうで小さな黄色い点になってる。

どこまで行けばいいのだろう。



終わらない。

水も尽きてきた。



さっき、つぎまで40kmだからと思って、ボトルを満タンにしてこなかった自分を呪う。


  • -

富士川の鉄橋をわたって右折する。





PC2到着

地点:188.7km

時刻:14時半すぎ

経過:9時間39分



まだアイアンマンのバイクパートくらいか。



このあと42kmを走るか、、、

400kmを漕ぐか、、、

どちらもきついな。


  • -

つぎのPCまで70km以上ある。



遠いな。

ルートを確認する。

しばらく県道10号をひた走れば大丈夫そうだ。

頻繁に地図を確認しなくていいルートは助かる。

身延

PC3に向けて漕ぐ。

じぶんにとって未知の距離に突入だ。



県道10号は、富士川の左岸を通る。

交通量は減り、なんだかのんびりした気分になる。



山あいの、木々の隙間から、富士川が見えかくれする。

アップダウンが続く道。上り坂が見えるたびにぞっとして、川が見えるとなんだかほっとする。



ブルべライダーはちりじりになり、

前方にかすかに一人見えるだけ。


  • -

スタートから12時間経過した。

国道300号のT字路を左折する。



富士川を渡る。

雄大富士川



きれいだ。



橋の上で立ち止まり、写真を撮る。

陽が落ちてきて、ほてった体を、ここちよい風がさましてくれる。


  • -

橋をわたり右折し国道52号線を走る。

交通量が増し、怖い。

特に、トンネルは車道も細くなり、クルマが近くをすり抜けるように抜いていく。



ゆるやかに続く右カーブ。

道は果てしなく続いている。

どこまでいけばいいのだろう。



ビュンビュンはしるクルマの、さらに右には、富士川があるはずだけど、そんな余裕はない。


  • -

富士川から離れ、いつのまにか頭の上に高架があらわれた。中部横断道路だ。



信号で停車。前にブルべライダーはいない。

うしろを振り向いても誰もいない。

ほんとにこのルートであってるのだっけ?

iPhoneを取り出し、マップを確認する。



あってる。



しばらくこの高架にしたがって漕げばいい。

間違いようがない。


  • -

午後6時半。

陽が長い。

まだ十分明るい。



しばらく平らな道だ。スピードはでないけど、体をやすめようと、DHバーにもたれかかりながら漕ぐ。



土曜日の夕方。買い物帰りなのかな。信号待ちでクルマが止まってる。なんだかよくわからないけれど、都会のせわしない感じがなくて、どこかしら、のんびりした感じがした。信号待ちのクルマの左がわを、のろのろと、先頭まで行く。青になる。左折のクルマはゆったりと自分をまってくれている。ありがたい。


  • -

しばらく一人旅だったが、前に2人のブルべライダーが見えた。仲間をみつけた感じがしてうれしい。



信号待ちで追いつく。信号が青になると、2人のライダーは左折。



あれ、ここで曲がるのだっけ?



念のため、マップを確認する。

合ってる。ここを左折して、突き当りを右に曲がれば、次のPCだ。



ついてるな。



ぼーっと一人旅していたら、高架が続く限りずっとまっすぐ漕いでいただろう。よかった。



左折すると、ゆるやかな登り。

しばらく平たん路だったので、微妙な坂でもきつい。

前を行く2人は決して速いわけじゃないけど、追い越すほど元気もない。



上り坂をとろとろと登る。

空はオレンジからゆっくりと青く暗くなりそう。



ようやくPC3に到着。



262.6km セブンイレブン 韮崎旭町店。

こんなに漕いだのに、、まだ半分も行ってないのか。


  • -

PC3

天気がよいからか、今日はみんな速いね。



スタッフの方が言っている。



毎度、PCに先回りしていてホントありがたい。もしトライアスロンのレースだったら、コース上の要所要所にスタッフがいる。ボランティアや大会スタッフが配置される。



ブルべは、大会ではない、レースでもない。一定の基準で、自転車を操れる人を認定するしくみなのだ。その基準は、体力だけでなく、交通ルールしかり、自転車乗りとして、紳士であることを求められる。



ブルべのスタッフからは、本当に、自転車を楽しんでもらいたいという感じが伝わってくる。


  • -

次のPCまで70kmほどだ。しっかりペペロンチーノを平らげて、エネルギーを補給するつもりが胃袋がおかしくなってきたのか、全部はたべられない。もったいない。ベストのポケットにはあんぱんをつめる。



これから夜間走行になる。ハンドルの肘パッドの真下に、左右2灯つけたvolt800。右側のライトをつける。



ヘルメットとバイクのテールライトを点灯する。



PCに入るときは、昼と夜の境目だったのに、出るときは、夜の始まりになってた。



疲れてるけど、楽しいな、ブルべ。


諏訪湖

次のPCは328.5km。

諏訪湖の向こう側まで漕ぐ。



韮崎のセブンイレブンを出て、しばらくは県道12号を北上し、国道20号にあたったらそのまま諏訪湖までいく。



コンビニを出た時は、まだうっすら明るかったが、あっという間に暗闇につつまれる。



遠く、道のはるか先に、点滅する赤いテールランプが見える。ほかのブルべライダーだ。町田で70名ほどいたライダーはみな、コース上のちらばっている。先頭はどこまでいっているのだろう。長い長くひいた600kmの線の上の、どこかにいるのだ。


  • -

20号線を漕ぐ。



家族でスキーに出かけたことを思い出す。



富士見パノラマスキー場から20号を進み、道の駅でチェーンをはずしたっけ。たしか、とんかつを食べたんだ。なつかしい。頭の中の思い出が、道を進むたびに思い出される。



夜の国道20号はの交通量は少ない。中央自動車道が並走しているためか、国道を選ぶドライバーも少ないのだろう。たまに数台のクルマがつらなって追い抜いていく、対向車線もガラガラで、バイクとの距離も十分保ってくれて助かる。県道52号のトンネルで、接触しないかとヒヤヒヤしてたのとは大違いだ。



しばらく登りづづけてる。

どこまで登るのだっけ。

全然終わらない。

真っ暗闇だ。



左右には田んぼがひろがってるのだろう。カエルの鳴き声が響き渡る。左右から、カエルの声援?をうけながらひたすら漕ぐ。



ホントに終わらない。

どこまでも、終わらない。

暗闇で、先はよく見えないけど、そんな真っ暗闇の知らない世界にいる。



なんだか、ふと、仕事のことを思い出す。なんだかよくわからないけど、この先は自分の知らない暗闇の中だけど、その中に飛び込んで、試せばいいんじゃないかな。とか、暗闇でよく見えないけれど、少しづつ進んでいけばいいんじゃないかな、とか、、、そんなことを思う。



すべてを知っている人はいない。知らない世界に入ってみて、見て触って聞いてわかったことをベースに、自分で考えて進めばいいんじゃないかな、それでいいんじゃないかな。



なんて考えながら漕いだ。

それでも登りは終わらない。


  • -

次のコンビニがあったらトイレに寄ろう。そう考えていいるところに、道の駅の看板をみつける。



白州道の駅。



以前クルマで来たことってあったっけ?多分ないな。

登りやすくするには、体を軽くすることだ。道の駅に立ち寄る。



道の駅の建物は灯りはついていない。

トイレの建物のわきにバイクを停める。



駐車スペースにはキャンピングカーやワンボックスカーが数台並んでいる。一晩ここで休憩するのだろう。



トイレに入り、反射ベストを脱ぎ、ジャージを脱ぎ、腰を下ろす。思った以上に疲れているようだ。足元がよろよろしている。



トイレに入っている少しの時間、停めているバイクが気になった。誰もいないトイレで、なにも起きないとは思うが、大切な相棒を、トイレの中につれてきてもいいな。



軽くなった体で再び漕ぎだす。前も後ろもライダーは見えない。暗闇の中に一人きりだ。



ヘアピンカーブを過ぎ、さらに登る。前方に点滅する赤いランプが見える。あそこに仲間が漕いでいる。ランプは次第に近づく。休憩中だろうか、なにかトラブルか、、、。



光は道路わきの草むらから発信している。ドキドキしながら近づくと、ただの、注意を促すための点滅灯だった。



はぁ、



、、、、、この登りは、どこまで続くのだろうか。



もう疲れてる、ずっと前から疲れてる。


  • -

下りか。

下りだ。

下りになったっようだ。



ペダルに力を加えなくても前に進む。

漕ぐのをやめ惰性でバイクを転がす。



反対車線に小さなライトの光がみえる。

ブルべライダーとすれ違う。



すごいな、、、もう諏訪湖をまわって帰ってきたのか。一瞬目が合って、手をあげて、頑張れって言ってくれた気がする。



暗闇の先はトンネルだ。

真っ暗だった世界から、ぼんやりとオレンジ色の光の空間に入っていく。



疲れているけど、どこか気持ちいい。

トンネルを抜ける。



目の前に、茅野の街灯りが広がる。

ようやく街に出たんだ。



行けるところまでと、自分を試しながら漕いできた。

ずいぶん遠くまできたな。



うれしくて、なんだか涙が出てきた。


コンビニわきの人影

トンネルからさらに下り、自分とバイクは街のなかに吸い込まれていく。諏訪湖はもうすぐだ。



国道20号から、左にそれ、県道16号を進む。



これから諏訪湖を、反時計回りで進み、半周過ぎた場所のセブンイレブンが次のPCだ。



もう少し、もう少し。


  • -

反対車線のコンビニの角、街灯の下に人影がみえる。

バイクを傍らに、こちら側を見ている。

ブルべライダーか?



誰か仲間を待っているのかな?

もう夜も11時近い、

ぼーっと考えながら通りすぎる。


  • -

突然、後ろから話しかけられた。



「よく来たな!!!」



はじめは意味がわからなかった。

バイクがすっと、横につく。



誰だ?



お、おおお!!!



K田だ。



facebookの投稿みてたら、大体このくらいの時間かなと思って、待ってたさ。」



K田は、大学時代からの友人で、茅野在住、専門はヒルクライム

彼のおかげで、諏訪湖のブルべを知ったし、

彼のせいで、諏訪湖のブルべを申し込んでしまったのだ。


韮崎PCに到着したときに投稿した時刻から計算して待っててくれたのだ。いつ来るかもわからないのに、よく待っててくれたな。ほんと、ありがたい。



「ここまで、来れるとおもわなかったわ。さすがに疲れた。」



「いやー、すごいよ、ほんとよく来たな。ちなみに湖畔沿いのこの道は、自分の通勤路だよ。」と、彼は笑う。



「あとは、下り基調、いけるんじゃね。」



PCのコンビニまでの数キロを並走する。

K田、いいやつだな。


PC4 328.5km地点

PC4 セブンイレブン諏訪湖岸通り店 328.5km



湖畔沿いのPCに到着。湖面に街の灯りが、ゆらゆらとり映り込んできれいだ。

ここでもスタッフが、にこやかに出迎えてくれる。

ありがたい。



暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい気温。

コーヒーを飲み、おにぎりを3つ調達。少し休む。

ここまでこれた、半分は来た。



もちろん、自分史上最長のバイク距離だ。

本当に、600km完走できるのだろうか、、、

なんだか、出来そうな気がしてきた。

スタッフに別れをつげPCを後にする。



真上に明るく光る月明りの中、川沿いを進む。疲れ切ってるけれど、漕げば前に進む。夜のライドは楽しい、こんな時間が、もっと続けばいいのに。


  • -

さきほどのPCで予約した宿に到着、シャワーを浴び、部屋にごろんと寝転んだ。



次のPCは、390km。ここから65km先か。ブルべカードで確認しながら、iPhoneでルートをチェックする。おにぎりをほおばりながら考える。2時間くらいは寝れるか。



目を閉じて、2,3度寝返りを売ったところで目覚ましが鳴った。



2時間経過。



さあ、出発だ。


深夜と早朝のはざま

たった2時間の睡眠だけど、すっきりした。



さっき脱いだばかりのバイクジャージに再び袖を通す。

半袖短パンに、反射ベストを着て外に出る。さほど寒くない。



モバイルバッテリーを接続すると、ガーミン520Jはバックライトが光り、暗い中でもよく見える。経過時間は21時間を過ぎ、時は、自分の意思とは無関係に刻一刻と進んでいく。



静まり返った街に繰り出す。

深夜と早朝のはざま。

そんな中途半端な時間帯が好きだ。



もともと、時刻は、人間が暮らしやすいように、決めたしくみだ。すべては、流れていき、止まることはない。



だから、この、今の瞬間は中途半端でもなんでもないのだ。時は、「今」か、それ以外か、の違いしかない。



国道20号を走る。反対車線のカラオケショップの前にパトカーが停車してる。よっぱらいだろうか、


その先のコンビニに補給しようと立ち寄る。



以前、利用したことがあるコンビニだ。たしかクルマで来たことがある。何かの帰りだった気がする。思い出せないが。


  • -

コンビニ前で、パンク修理しているブルべライダーがいる。

同じタイミングで2日目を動き出しているのがわかりほっとする。



「寝れましたか?」



声をかけられた。M山さんだ。昨日小田原から何度もコース中で合って、いろいろ教えてもらって助かる。



「私の経験からすると、これからどんなに強靭なライダーでも眠くなります。100%の力で漕ぐと、余計に睡魔が襲ってきますから、80%くらいに抑えて、コントロールしていくとよいですよ」



なるほど。



これから睡魔との闘いなんだな。

そもそも、はじめてのブルベ。

はじめての600kmなのだ。



体にどんな変化が起きるのか。

なにもかも実験なのだ。


  • -

これから、昨晩さんざん登ってきた峠を降りることになる。試走レポートを思い出す。寒さ対策は万全にせよと書いてあったっけ。



コンビニからの出発前。ウィンドブレーカーを羽織ることにした。さらっと羽織って、体温が必要以上に奪われないようにしよう。サドルバックを開けた。



が、



あれ、、



どこだっ、、、っけ



ウィンドブレーカーがない。



おかしいいな、家を出る時に、小さく折りたたんで、確かに入れた記憶がある。



もしや、、、



PC2だったっけ、チェーンに油を指そうとサドルバッグを開けた、そのときに気づかずに落としてしまったのかも。



しかたがない、なにも羽織らずに行こう。

天気は、昨日と同様良く晴れそうだ。


  • -

コンビニで支払いをする時、店員さんに声をかけられた。



「そういう黄色いベスト着たお客さんが何人か来たたのですけど、自転車イベントですか?」



600kmの折り返しであること、一晩仮眠して、再出発するライダーが多いことを話した。



「そうなんですね、じゃこれからも何人か同じ自転車イベントの方がくるかもしれないですね」



自分は小さくうなずいた。



内心、ぼくは、ほぼ最後尾で、PCになっていないコンビニなので、そんなに来ないかもしれないけど、ごめんね店員さん。

トンネル

諏訪湖を離れ、トンネルに向かう。



クルマはまばらだ。

ゆるやかな登り坂。

車道からトンネルわきの歩道に道を変えをゆっくり漕ぐ。



前方に2名、車道にも2名。ブルベライダー漕いでいる。この時間帯に、同じタイミングで漕ぎ出しているということは、自分の計算は悪くないということだな。



ながくゆるやかな登りが続き、ちょうどよく体があたたまった。



思いの外、アスファルトがデコボコと荒れている。昨晩は、こんな荒れている道を、真っ暗な中かけ降りていったんだな。パンクとか、マシントラブルがなくてよかった。


  • -

トンネルから先の登りが終わると、長い長い下りがはじまる。さきほどあたたまった体に、ひんやりとした朝の空気があたり、気持ちいい。



6月3日、日曜日。梅雨の真っ只中のはずなのに、1mmの雨も降らない、絶好の自転車日和だ。



半袖ジャージに、バイクパンツ、反射ベストを着て漕いでる。寒くない。



ペダルを止めたまま、下り坂はどんどん進んでいく。下りながら、ロードバイクが左に停まっているのが見えた、M山さんだった。

これから長い下りに備えて、保温のためのしたくしている様子だった。



まだまだずーっと下りが続く。

漕がなくて進んで、うれしいのだけれど、

いったいどこまでいくのだっけ?このままコース間違えて、DNFになったりするのはいやだ。



念のため確認しよう。側道に停車し、iPhoneで現在地とルートを確認する。大丈夫だ、ミスコースしていない。そもそも、こんなまっすぐな20号を間違える人がいるのだろうか、、、。



ルート確認している最中、ブルベライダーが追い抜いていった。M山さんだ。



再びバイクに乗り、薄明るくなった道を行く。昨晩苦しんだ峠も、反対向きはなんともあっけなく通りぬけていく。



ぼんやりと、色のない世界から、光があたり、少しづつ生き返って行く感じがする。



朝だ。


  • -

20号から左に入る。



スキー帰りに、クルマで通ったことのある道。けっこう斜度がきつい。この道でスリップしたのを思い出す。ノーマルタイヤで出かけた帰り道で、夜にかけてちょうど、道がうっすらと凍結しはじめたのもあって、この上り坂が登れなくなりそうで、アクセル踏んでるのに、時速10kmで全然進んでなくて、突然グリップが効いたらどうしよう、逆に、スリッップしまくってる時に、対向車がきたらどうしよう、どうしよう、どうしよう。



なんて思った時のことを、3秒くらいで思い出した。



登りきった頃、太陽は十分に道を照らしてた。県道17号の入り口で、ライトを消した。

通称、七里岩ライン。

眼下には、すーっとまっすぐに伸びる道。

道は、なめらかに、段をつくりながら、ずっとはるか向こうまで続いている。



あ き ら か に きもちよさそう。



そうか、主催者は、こうしてこのタイミングでこの道を走ってもらいたい。そんな風にコースを設計しているんだな。早朝で、交通量も少なくて、交差点もわずかな、こんな道を選んで、2日目の朝を、すがすがしく進んでおいでと、そんな風に言っている気がした。



それとも、この時は気がつかなかったけれど、終盤に残るキツイ登りの前の、最後のお楽しみだよと、いっているのかもしれなかった。



いずれにせよ、素敵なコース、素敵な道であることは確かだ。



カシッ



とペダルをはめ込んで、漕ぎ出す。


  • -

視界を切り裂くように、後方に飛んで行く景色。

左から当たる朝日を背にして、山がくっきりと浮かび上がる。



八ヶ岳だ。



ちらちらと、左をみながら走っていたけど、停車して、あらためて見入る。



楽しい、ブルベ。


  • -

下っても、下っても、やっぱり、まだ下りだ。



途中の信号待ちで、いっしょになったブルベライダーにも、思わず、気持ちいいっすね。と嬉しくて声をかけたりする。



けっこう下ったはずなのに、まだ下っている。風を遮るものは、反射ベストだけという、ドラクエでいうと、くさりかたびらを買えずに、布の服でがんばってしまっている感じくらいで、流石に寒くなってきた。



ちょっと、顎が、ガタガタしてきた。



だれもいない道なのをいいことに、



「さみぃぃぃぃーーーーーー!!!!」



と叫びながらダウンヒルしてみたけれど、それくらいでは温まるはずもなく。きもちいい道なのはよくわかったから、はやく、はやくこの下りを終えてほしい。



と、ただそれだけを願って下りる。



寒い。



あまりにも次のPCがこないので、もしかしてミスコースしたか?あの坂のぼるのでは?と地図を確認するも、あってる。



立ち止まっていると、しっかり防寒装備をしたブルベライダーが下って行く。



晴れているからよかったけど、試走レポートどおりの寒さだったら、、、と想像して、余計寒気がした。


  • -

下りきり、左側にファミリーマートが見える。

よかった、助かった。



PC5 390km地点だ。

早速、豚汁を買って、体を内側からあたためる。



25km 標高差500mのダウンヒルは終わった。

のこり200kmだ。



不思議と、スタート前は、遠く感じた200kmが、あと少しの距離だと勘違いしてしまう。


平らな道

次のPCは460km地点、 サークルK芝川町役場前店 、ここから70km先だ。



豚汁で温まった体でコンビニを出発する。iPhoneで地図を確認した、ここから、3つ先の曲がり角だけ頭にいれておく。



出発してすぐ赤信号で停まっていた、しばらくたっても青にならず、確認したら押しボタン式の信号だった。



自分が先頭だったので、数名のライダーを、いらない信号待ちで待たせてしまった。



なんだか、申し訳なくて、青になった途端に、ふだんより速めのペースで漕ぎ出す。速めのペースはきもちよくて、平坦区間がしばらく続くのが見えて、DHポジションでバイクを進める。



きもちいいな。



目の前には、富士山が現れて、ますますテンションがあがる。もしかして完走できるのでは、と、楽観的な自分がいる。



富士川と、笛吹川をまたぐ橋の真ん中でバイクを降り、写真を撮る。


  • -

のどかな田園風景の中を漕いでいると、左の遠い先から電車がはしってくるのが見える。見延線だ。



2両編成の電車が、山を背にして、どこまでも見渡せる畑の中を走ってくる。まるで、Nゲージのミニチュアを見ている気分だ。



前をいくライダーは、一旦停車して、線路のほうに向かった、電車を撮りに寄り道していくらしい。ブルベは、ただ一直線にゴールにむかうのでなく、人それぞれ、やりたいことを絡めながら、進めるところがいい。


味覚異常

ポケットに入れていた、梅干しを食べる。コンビニで塩が多めのパッケージを買って、適当なタイミングで食べてた。種がないので、舌のにぺとりと置いて、塩気を味わいながら食べる。汗といっしょに、体から塩分が抜けて行くのを、少しづつ補給してきた。



昨日から今日にかけて、何個も食べてきた梅干し。

舌にのせると、ビリビリと痺れるような味。



あれ、、、



舌が、、



痛い。



塩分を摂りすぎたのか、舌の味覚を感じる細胞、味蕾が壊れてしまった気がする。



やばいな。



長い距離を走って来て、脚はだるさはあるものの、部分的な痛みはない。それ以外の、体の部分。今回は舌が壊れている。



思いがけないところが、壊れるんだな。

ある意味、自分自身を使った、人体実験みたいだ。


  • -

暑くなってきた。

6月3日、日曜日。梅雨の真っ只中のはずなのに、よく晴れる。暑い。



水分がなくなって、力もなくなってくる。

少し、日陰で休もう。



キョロキョロと自販機を探しながら漕ぐと、コインランドリーが見えた。

コインランドリーの入り口のベンチに腰掛ける。



暑さで半分溶けたチョコレートバーと、リアルゴールドの炭酸飲料を流し込む。ぱちぱちと舌上で、炭酸が弾けるのが痛い。


      • -

炭酸を飲み終え、飲みきれなかった分は、ボトルにつめこむ。ボトルから飲む時、すっかり炭酸は抜けて、ただの甘い液体になっている。それでいい。



富士川を右手に、ちらちらと見ながら漕ぐ。このあたりは、往路でのルートを逆方向から進む感じになる。



行きで通ったときにくらべて、心に余裕がある。一度でも、走ったことがあるというのは、ひとつひとつのカーブを覚えているわけではないけど、その全体のコースの雰囲気を、頭のなかに貯めておけるんだろうな。おそらく、(いや、間違えなく、)右脳を使っているのだ。



前後にブルベライダーは見当たらず、単独行が続く。細かいシフト操作ができなくなっていて、上り坂、と下り坂で、フロントギヤを、ギッタンバッコン、シーソーのように切り替えるだけ。



多数のギヤが選択できるはずなのに、使っているのは、フロントの2択のみ。電動化したら、もっと自由なのだろうか、とふと思う。けど、長時間のライドで、電池切れや、電気的なトラブルで、シフト不能になるリスクもある。どうなのだろう。



疲れてる、かなり。

マイペースで行こう。



次のPCから先は登りだ。

山中湖へはクルマでよく出かける。富士五湖の中で一番標高が高いことだけ覚えていて、たしか900mだった。



ガーミンの標高表示はじりじりと下がり、100m台だ。これから登るのだから、いい加減下りなくていい、、、



そんなことを考えていたら、ようやく、PC6に到着。460km地点。

陽はすでに高く、じりじりとした暑さが、体力を削っている。

PC6 460km地点

PC6を出発する。ボトルに水を補給し、おにぎりでエネルギーを摂った。



コンビニの裏手の道を行き、線路を渡ると、いきなり斜度10%の表示が現れる。



やれやれ、いきなりか、、、



これから何キロも続く登り坂を想像して、笑ってしまう。なんなのだこのコースは。


  • -

時速10kmにも満たないスピードで、くるくると登っていく。刺すような日差しが暑い。今朝は震えが止まらないくらいの寒さだったのに、今度は暑さだ。



2本のボトルには、スポーツドリンクと、コーヒーを入れてある。かぶり水を用意しておけばよかったと後悔した。体に残る熱は、パフォーマンスを落とすのだ。



自販機を見つけて、停車。水を買う。



頭、腕のアームカバー、背中に冷たい水をたらし、一口飲んで再出発する。濡れたウェアを吹き抜けた空気が、体を冷やしてくれるのがわかる。


  • -

自販機休憩のあと、M山さんにおいついた。



のどかな景色を眺めながら、おしゃべりしながら登っていく。後輩に誘われて、フルマラソンを走ることになったことを話していた。面白い。長い時間体を動かし続けるのは、ブルべもマラソンも同じだけど、トントンと、骨に刺激をするのがランニングで、自転車は、筋肉だけを使い続ける点がちがうんですよ、みたいなことを話す。



話していると、上り坂も気にならなくなってくる。



気持ちよく登っている。田舎の道で、曲がり角もない。道なりでどんどん登れば、朝霧高原までつくはずだ。



そう思ってた。



ふと、地図を確認する。



ズレてる。



ルートとは違うポイントに居ることに気づいた。



「まちがえちゃいましたね」



笑いながら、今きたコースを戻る。



汗ばんだジャージーに風が吹き抜けて涼しくなる。


  • -

正しいコースに戻り、再び登り始める。

M山さんは、先に行き、単独走になる。



森の中に続く道、クルマもまったく通らない。静かな時間が過ぎる。

ガーミンの高度表示ばかり気になる。



さきほどから50mも上がった。けど、まだ標高500mだ。

少しづつ、少しづつ、登りを重ねていく。



けど、終わらない、登りが終わらない。

脚が攣りそうだ。



梅干しを食べても、舌がしびれるだけ。

攣り防止に効くという漢方も使い果たしてしまった。



攣ったら終わってしまう。

ピキッっとならないように、だましだまし行く。



標高と同時に、時計も見る。

つぎのPCの締め切り時間が気になる。



PC5を出た直後は、完走まで楽観的だったのに、時速15km以下で進む時間が増え、どんどん貯金が削られていく。まずい。本当にまずい。


  • -

田んぼに水を張るための用水路に勢いよく水が流れている。立ち止まって、ざぶんと浴びたい。リフレッシュしたら、もっと早く進めるんじゃないか。



あのカーブの先まで行こう。あとはその時考えよう。

とにかく登るしかない。



木陰で、休憩するブルべライダーをみかける。

お互い、疲れましたねと、目で伝えあう。


  • -

森の向こう側から、クルマの音が聞こえた気がする。

国道139号に出れば、平たんなはずだ。



先月、クルマで走った。

朝霧高原の道の駅を思い出しながら漕いだ。



音は聞こえるが、道が現れない、登りは続く。

ようやく139号と合流した。


  • -

合流後、交通量が増す。

道の両わきは、草原になり、日陰がなくなる。



青空の向こう側に、カラフルなパラグライダーがいっせいに降りてくるところだ。気持ちよさそうだな。



想像では、139号に出たら平たんになって、スピードも回復すると思ってた。登る力がなくなってるのもあって、たいして斜度がなくても、時速10キロほどしか出ない。



まずい。



貯金を使ってしまっている。

気持ちばかり焦る。



ソフトクリームを食べたら、回復するだろうか。

いまはとてもそんな余裕がない。



食べてる少しの時間でも、前に進まないと、次のPCに間に合わなくなるかもしれない。



下りはまだか、、、、



反対車線を、いろんなサイクリストが通りすぎていく。すれ違う時、目線をあわせ、あいさつをかわす。



反射ベストを着た特殊な自転車乗りの自分に、がんばってください、と声をかけてもらってる気がした。



下りはまだか、、、


  • -

完走できなくてもいい、行けるところまでいくんだ。

そう考えながら、朝霧高原から本栖湖まで漕ぐと、ようやく下り坂になった。



長かった。



ペダルを置き、惰性にまかせる。

次第に、スピードが増す。

次のPCには間に合うか。



左からは、木の枝が張り出し、よけるように車道側にラインをとると、右はビュンビュン飛ばすクルマが追い越していく、怖い。ここまで来たのだ、事故でリタイヤなんでなりたくない。



西湖の北側の道がルートになっている。139からそれる。

交通量も減り、緑に囲まれた下り坂だ。きもちよい。



やくに立たなくなった脚を少しでも休める。

5年前に出場した富士五湖100kmマラソンを思い出す。



あの時も、本栖湖から西湖に抜ける、この道を走ったのだ。右手に駐車場が見えた時、エイドステーションで座り込んでうどんをすする自分の姿がうかびあがった。



こうして、同じ道を、違う大会で走るのは面白い。


  • -

西湖の湖畔沿いを走る。

本当にいい天気だ。



青空のむこうにくっきりと富士山が見える。

わざわざ、コースを、湖の北側にしているのは、湖と富士山を見せたいからだ。



雄大な富士山を見ながら、走ってもらいたい。

そんな風に感じながら、漕いだ。


  • -

西湖から急坂を降り、河口湖へ出る。



ふだんは気にならないくらいの、路面からくる振動がきつい。TTバイクは、通常のバイクより、より前のめりなポジションになっている。ひじ掛けに、腕をのせていない時間が大半で、ずっと、手と腕を、ハンドルに対して突っ張り棒のように使っている。この手と腕がそろそろ限界だ。脚はもう力が出ず、軽いギヤをくるくると回すだけ。



大陸から来た観光客が、借りた自転車で気持ちよさそうに走っている。一見、バリバリと走りそうな格好をしている自分をみて、不思議そうな顔をしている。



サドルのセンターに、おしりを下ろすとなんだかひりひりと痛む。右や左におしりの置き場をずらしながら進む。


  • -

トンネルをぬけたら、PCのはずだ。



あと少し。



交通量が多いので、歩道を行くように、昨日のブリーフィングで指示があった。下り基調だけどビュンビュン行きかうクルマのわきを行く勇気はない。



歩道をのんびり漕ぐ。

さっきまで、照り付けてた太陽から逃れて、涼しくてうれしい。


PC7

ようやく、PC7、 519.5km セブンイレブン富士良田旭3丁目店に到着した。



登っている途中は、時間内にPCに到達できるのか、不安でしかたがなかった、ようやく着いた。


店内のイートインに座り、火照った体を少しでもさまそうと、ガリガリ君をかじる。疲れ切っている。この先、80kmも漕げる気がしない。



隣のブルべライダーは、カップラーメンに、チキン、に餃子をばりばり食べている。


「さっきの登りで、腹減っちゃってさ。」



胃袋が強いって、すごいな。

とても、そんな勢いで食べれる気がしない。



どうやら、このPCは別のブルべのPCになっているらしく、これから山伏峠までは同じルートらしい。回復したのかどうか怪しいが、とにかく最後のPCを出発する。


あとは、ゴールまで80km。



なんでだろ、こんなに遠くに感じるのは。

新鮮なカラダだったら、なんでもない距離なのにな。


山中湖へ

渋滞しているクルマの列のわきを、くるくる低速で進む。

そう、山中湖までは再び登りなのだ。



交差点を曲がると、すっと続く登坂の正面に、富士山が見えた。



きっつ、、、



と言いながら、登っていく。



138号で山中湖に向かう。何人ものサイクリストに抜かれる。歩道は、ランナーが走っているが、漕いでいる自分と同じくらいのスピードだ。



河口湖から山中湖までの道、景色は下りに見えるのに、実は登っている。脚を停めて進むようにみえるのに、漕がないと前に進まない。


  • -

山中湖についた。

なんども見た景色。

湖畔のサイクリングロードを行く。



湖の上で、ジェットスキーをやっているきもちよさそうだ。

駐車場では、富士山を背景に、皆が写真を撮っている。


  • -

山伏峠の手前のセブンで補給する。

炭酸飲料や、スポーツドリンクは、もうなんだか体が欲してなくて、ただの水を買う。

そういえば、この水、500mlも1.5Lも同じ値段なのだ、、、なんなのだ。

1.5Lを買って、ボトルにつめ、胃に流し込み、再出発する。



トンネルと抜けたら、下りだ。

遅くてもなんでもいい、あと少しなんだ。

観光帰りのクルマに抜かれながら、山伏峠のトンネルにつく。



ようやくここまできた。

ライトを再点灯して、下りはじめる。

安全第一

35時間49分

制限時間の40時間まで、残り4時間10分。



元気な体なら、なんでもない距離だけど、搾りかすの状態大丈夫なのか、、、。



山伏峠を下り始める。

さっきまでのノロノロで、静止した景色が、一気に動き出す感じ。速い。



スピードが出すぎないように、両輪ブレーキをしながらコントロールする。後ろにクルマが連なったような気がしたので、いったん側道で停車してやりすごす。



びゅん、と20台くらいのクルマが通り過ぎる。みんなそんなにスピード出して、こわくないのかな。


  • -

下りながら、しっかりとハンドルを握る。

観光帰りで、週末ドライバーが多いはずだ。



「安全第一、安全第一、、、」



と唱えながら下る。



握力も低下している、細かい作業も無理だ。

万一、パンクしても、タイヤ交換する手が残っていない。

事故だけでなく、自分のパンクもしないように、精一杯、自分のセンサーをとがらせながら、進む。


ここまできたんだ。

完走したい。



信号で、ブルべライダーに追いついた。

「疲れましたね」



とお互い、声をかける。



まる2日かけて、好きなことをやってきた結果、へとへとに疲れてるけど、言葉とはうらはらに、笑顔になってる。



「疲れましたね、笑」



といった感じだ。



もう少し。もう少し。


  • -

陽が落ち始め、涼しくなってくるにつれ、元気が出てきた。道志みちは、無事にクリアした。



413号の、坂を上っていると、通り過ぎるワンボックスから、少年が自分に声援を送ってきた。



「がんばってくださーい!!!」



お父さんが自転車乗りなのか、たんに、へろへろで漕いでいるのをみたからか、理由はわからないけど、声援をもらった。何でもないことなのに、ただ自分勝手に漕いでるだけなのに、ありがとう、と思って、なんだか涙が出てきた。



あと少し、あと少し。


相模原まで戻ってきた。

少し寄り道すれば、自宅に着いてしまう。



残り10km。

見慣れたいつもの道。橋の上から見下ろすと、こだまプールは清掃中だ。



ママチャリほどの速度で、進む。

市街地に入り、交差点が次々と現れ、どこで曲がるのか、iPhoneを何度も取り出しては確認する。



ゴールまで残りわずかだ。



街には週末をどこかで過ごして、かえってきたクルマが流れている。



なんだか、旅がおわってしまうのがもったいない気がして、もっと赤信号にひっかかって、少しでも旅を引き延ばしたい気分になる。



脚はどこにも残っていないけれど。


  • -

交差点を右折する。

ゴールはどこだ。



ビルの谷間に張られた、白いテントからスタッフが手を振る。

まるで、お祭りのあとの打ち上げのようだ。



おわった、、、たどり着いた。

600km走り終えたんだ。


  • -

にこにこするスタッフに迎えられ、写真をとり、チェック用のレシートを提出して、その場でスタッフに確認してもらう。ブルべのカードは一旦預けて、手続き後、後日送付されるそうだ。



「完走おめでとう。へぇ、はじめてのブルべで600kmにエントリーしちゃったんだね。ちょっとおかしいね」



と笑いながらスタッフが言う。



「メダルがいる場合はここにチェックね」



そうそう、このかっこいいメダルがほしかったんだ。



昨日の朝、いけるとこまでと思って漕ぎだした。

昨晩、諏訪湖で、ずいぶん遠くまできたものだと思った。

今朝、もしかして完走できるかもと思った。

昼、脚が終わって、味覚も、手もおかしくなって、無理だとおもった。

夕方、やっぱり完走したいと思った。



そして、ゴールにたどり着いた。


  • -

自転車は面白い。椅子に座り続けて、同じ動作をずっと続けているだけで、どんどん景色が変わり続けるのだ。



適切なエネルギーを摂り続けたら、無限に動作する、筋肉も面白い。



天候にも恵まれ、友人にも助けられ、出場したライダーにアドバイスをもらい、本当に幸運が重なって、完走できた。



そういえば、、、、、



はじめの通過チェック、七里ガ浜のコンビニで、バイクに鳥の糞がついてたっけ、、、あの時から、うんがついてたんだな。


  • -

疲れてボロボロだけど、楽しかった。

いまなら、もっと上手に走れる気がする。



おわり。